見てるパパ!私たちも「金」

フロンティアエイジ2月号 第2面より
見てるパパ!私たちも「金」
泳ぎ続ける92歳母と64歳娘
92歳と64歳の母娘スイマーが「二人三脚」で輝いている。マスターズ水泳の国際大会でそろって金メダルを獲得したこともあり、日本記録、世界記録をしばしば更新。母が「年齢は限界ではない。二人でいつまでも泳げれば」と言えば、娘は「母は永遠のライバル。追いつき追い越したい」。プールサイドに咲く合わせて156歳の夢は長く、熱い。(鶴田隆志)
マスターズで記録連発 支えあいながら互いがライバル
高石市羽衣に住む葉室三千子さんと、長女で造形デザイナーの広瀬カヤ子さん。三千子さんの夫は1936(昭和11)年のベルリン五輪で200メートル平泳ぎの金メダリストになり、昨年11月末には市ふれあい健康増進センターに記念コーナーが設けられた葉室鉄夫さん(1917~2005年)。二人の活躍には、その人の後押しもあった。
二人とも子どものころは、今も続く浜寺水練学校で水に親しんだ。日焼けして「前か後ろか分からなかった」ほど。ともに羽衣学園(前身は羽衣高女)に進んで、得意は平泳ぎ。全日本クラスの実力を持ちながら、五輪出場の夢を果たせなかった点も同じだ。
三千子さんは「前畑がんばれ!」の実況放送で有名なベルリン五輪女子200メートル平泳ぎ金メダルの前畑(兵藤)秀子さん(1914~95年)と、国内最終予選を隣のコースで競った。カヤ子さんも64(昭和39)年の東京五輪候補選手。代表になった木原光知子さん(1948~2007年)らとの合宿経験を持つ。
母校の美術教師を務めた三千子さんの後を追い、デザインの世界に飛び込んだカヤ子さん。水泳から離れていたが、38歳でマタニティー水泳講座に参加して水泳の楽しさを思い出した。直後に催された5歳刻みの年齢別で競うマスターズ水泳の35~39歳区分に参加し、そのクラスの日本記録を樹立。これに刺激されたのが三千子さん。50年ぶりにプールに復帰して65~69歳区分の日本記録を更新してしまった。
再び「水を得た魚」になった母娘スイマーを、鉄夫さんは「おばさんの運動会」とジョークを飛ばしながら、2年ごとのマスターズ水泳世界選手権大会に同行した。三千子さんはその後、200メートル平泳ぎなどで十数回も世界記録を更新、04年のイタリア大会では5個の金メダルを獲得して夫を「僕も抜かれた」と脱帽させたという。カヤ子さんも鉄夫さん没後の09年、シドニー大会で金3個を手中にした。
ピンチもあった。三千子さんが88歳の08年に転倒し、大腿骨を骨折して長期入院。カヤ子さんは「再起は無理かも」と覚悟したが、リハビリに励んで90歳で戻ってきた。「好きなことをやり抜く。可能性があるならあきらめない」という三千子さん。今も「長座体前屈」では「20歳代の女性と同程度の柔軟性を持つ」と専門家が太鼓判を押すほどだ。
堺市のウイング・スポーツクラブを練習拠点にし、スイミングクラブ「KSC鳳」に所属。週に2、3回、25メートルプールで500メートル前後をゆったりとしたフォームで泳ぐ。平泳ぎだけでなくクロール、背泳ぎ、バタフライ、スタートなどの練習も。水に入ると体全体が生き生きし、前かがみ気味の三千子さんの背筋はピンと伸び、カヤ子さんの顔色は桜色に染まる。記録も順位もない練習の場で、無心に水をかく母娘スイマーは年齢を超越して若々しく、美しく見えた。
ニューシニアの情報新聞「フロンティアエイジ」
オフィシャル・ホームページ http://www.f-age.com/

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